分科会1「自治基本条例と市民参加」

パネリスト ■加藤 紀孝(北海道ニセコ町企画環境課) 
■橋本 卓(前箕面市長・自治政策シンクネット『みらい自治』企画委員長) 
田中 孝男(パシフィック・ミュージック・フェスティバル組織委員会)
■中谷 通恵(子育て通信代表)

コーディネーター ■神原 勝(北海道大学法学部教授)
司会       ■早川 淳(渋谷区役所)

企画趣旨(早川淳)
 自治基本条例は自治体全体に関わるものなので、いろいろな要素を含む。本来なら議会や司法の位置付けも含まれるものとも思われるので、自治基本条例の全体像を分科会で取り上げるというのはテーマが大きすぎる。そこで、最も大切な構成要素である市民参加の視点から見ていくこととした。
 検討課題は、第一に条例の制定過程にどれだけ市民参加が図られているかということと、第二にできあがった条例の条文に市民参加がどれだけ位置付けられているかということである。
 分科会なので全て事例報告や会員の研究報告とした。2名づつの報告を終えたところで、コーディネータからのコメントと会場からの発言を求めた。

自治体学会事務局の了承を得て、自分の発言部分について掲載させていただきます。他のパネリストの方々の貴重な発表については、2002年春頃に「大会報告書」が販売されますので、そちらをお求め下さい。


中谷  あらためまして、こんにちは。北海道にあります元気まち・白老町から参りました中谷と申します。今の早川さんのお話にもありましたように全く場違いですが、早川さんや神原先生から「町民、市民が直接意見を言うことが大切だ」という強いお言葉をいただきまして、出てまいりました。皆さん、一番疲れている時間につたない発表を聞いていただいて恐縮ですが、どうぞよろしくお願いいたします。
 私のレジュメと資料ですが、レジュメの方は「白老町住民参加条例の制定への市民参加」ということで、3ページになっています。そして資料の方が通しの番号で、4ページから15ページまであるものです。レジュメの方に沿って話を進めたいと思いますので、よろしくお願いします。

なぜ、協働したいと思うようになったのか
 初めに、これまでの私自身の活動から、自己紹介も兼ねまして、なぜ行政のいろいろなお仕事に参加したいとか、協働したいと思うように至ったかということをお話ししたいと思います。なぜそのような思いに至ったかということを振り返ってみますと、白老町の役場の職員の方の中に、何人も、本音でいろいろなことを話せる方、強い信頼感を寄せられる方がいらっしゃるということです。特に最初に意識して出会った行政の方が、私にとっては保健婦さんだったのですが、育児サークルをつくりたいという思いを持っていた私が、その保健婦さんとともに、大変なことを乗り越えながら実現していく中で、非常に大きな喜びを感じました。それが最初の出会いだったというのが、大きかったように思います。

 資料の4ページを見ていただきたいのですが、「子育て通信から見えたもの」というところに、この10年間どういうことをしてきたかということが書いてあります。平成2年に白老町に住むようになってから、育児サークルをつくったり、『子育て通信』というミニコミ誌を発行したり、それから子育て中の親の本音を知りたい、課題を探りたいということで、自分で勝手にアンケート調査をしたり、それから母親たちだけでいろいろなことを話し合っていても、課題の解決にはつながらない。
立場の違う人とも協力して、力を貸してもらわなければだめだということで、まず父親である男性の方を巻き込もうと、父親向けの通信を発行したり、ブックレットを作成したり、また地域の中で先輩の親が若い世代を支援していこうということで託児グループをつくったり、読み聞かせの活動に参加したりしてきました。
そして、それぞれのことについて学びたいことがあるときは、自分たちで企画し、学習会などを行ってまいりました。そういう中で、当然、行政の方とのいろいろな出会いというか、つながりが生まれてきたわけです。

 レジュメの(2)に行きまして、でもどうして私みたいな、あまりこういうことに関心のなかった者が、協働などを願うようになったのかと振り返りますと、たまたま私が強く感じていた課題(子どもを取り巻く子育て環境について)を解決するためには、協働することが不可避だったのです。
特に乳幼児期に子どもの心の基地というのをきちっとはぐくんであげたいと思うけれども、それがなかなかできない状態に親が置かれている。そういう課題を解決したいと思ったときに、つまりそれは子育て、子育て支援、教育、男女協働参画、福祉などの分野ですが、これらの人々の意識改革をするのが一番重要な課題に挙がっている分野については、どうしても絶対に、当事者の声を聞いてその中から課題を見つける必要があるということ。そしてその解決のためには、当事者の自発性をちゃんと喚起して、一人ひとりできるところから行動を起こしてもらわないと、解決に向かっていかないと確信しました。

私自身も、いろいろな立場の違う方、男性、それから行政の方、世代の違う方に自分たちのことを理解してもらい、また皆さんの意見も聞きながら力を合わせることで、ほんの少しずつだけれども前に進んで来られたなという実感があります。そういうような背景があって、このような条例というものにも強く興味・関心を抱いたわけです。

白老町まちづくり政策研究会の取り組み
 レジュメの2番の方に移りまして、試案づくりについて、白老町まちづくり政策研究会(バビル99)の取り組みから報告いたします。

 初めに条例制定までの過程ですが、先ほどのニセコ町さんの報告にもありましたが、白老町でも10年ほど前から元気まち運動ということで、何かにつけ協働のまちづくり、住民参加ということが首長さんや行政の職員の方から言われ、さまざまな仕組みが整えられてきています。
そういう中で、この白老町まちづくり政策研究会(バビル99)というものですが、私はこれに96年から参加させていただいています。そのきっかけになったのが、この年、この自治体学会の北海道のフォーラムが白老町で開催されたことで、学ぶ機会を与えられ、それまで自分たちの中だけでやってきたことがよく見えるようになり、先ほど一番で申し上げたようなことに気付かせていただいたということです。

 その研究会で99年から約2年間、最初から条例ありきではなかったのですが、視野に入れながら、より情報の共有や住民参加が進むにはどうしたらいいかということを議論してきました。
そして先ほど紹介していただきましたように、札幌地方自治法研究会の住民参加条例試案プロジェクト研究会の協力、技術支援を得まして、今年の春に、後ほどご紹介します住民参加条例試案というものができあがりました。ですから、この図の中でいいますと、今、第一段階の後半の部分にあるということです。これからまだ幾つも段階を経て、神原先生がおっしゃったように、本当に自治を高めるということに、この条例制定が結びついていったらなと考えています。

 (2)の研究会の取り組みから具体的なことをお話ししたいと思います。
 まず条例づくりの進め方ですが、白老らしい制度化をということで、具体的な活動からの課題をたくさん検討して、その解決策を条例にしたいということ、住民参加条例については、住民の視点で策定していきたい、これは、この研究会に参加している行政の方が強く望まれていたことです。
そこでいう「住民の視点とは」ということですが。いろいろな活動や行政の仕事に参加してみて不満に思ったり、不足に思ったりしたことなどを現実の事例や体験からその解決策を探って、有効性、利便性、快適性などの向上を図っていく。個人的、限定的ないわゆるエゴを優先させないで、さまざまな立場の方と合意を得ながらルール化していく。そして、私たち町民も役割分担や費用軽減に努めて、お互いが持てる力や社会的責任を発揮していくことが重要だということを、たびたび確認しながら進めてきました。

 この2年間、15回ぐらいの例会を行ってきたわけですが、その中から私が説明できるのは、やはり自分で発言した部分ですので、三つほど次の2ページに挙げてあります。どのようなことを事例として研究してきたか、お話ししたいと思います。

委員会・審議会における住民参加のあり方
 まず一つ目、住民参加の実践事例として、資料のBをご覧ください。資料の5ページ目、6ページ目にあります。5ページ目は大変縮小していて見づらいと思うのですがご覧ください。これは、私もこの時点までで五つぐらいの町の審議会や委員会の委員をさせていただいていました。その中で、特にその会議に参加して、どうしてこんなに住民の意見というのが取り入れられないのだろうとか、参加してもなかなか意見が出しづらいのだろうと悶々と思った会議が、左側に一つ例としてあります。
 そして間をはさみまして、右側に白老町情報公開制度懇話会。この委員もさせていただいたのですが、この中では、難しいながらも大変勉強になり、また行政の方がとても丁寧に、私たちが出した意見を拾ってくれ、また会議が公開されたり会議録が公開されたりすることが緊張感にもつながり、参加して充実感のあった懇話会でした。そういうことで、会議の性格も違うので、この二つを並べたら悪いと思うのですが、自分の参加の経験として、どういうところに不満を感じ、どういうところに参加してよかったという思いを感じるかということを検証したいと考えて、このようにつくりました。

 その話し合いの中で、6ページにありますような、「委員会、審議会における住民参加の在り方に望むこと」というものが出てきました。例えば国や道から下りてきた計画などでも、まず初めにその計画というものが、本当に白老町に必要なのかということを、職員の間でまず議論してほしい、そして私たち住民とも対話してほしいということです。それからまず、住民参加の一つの形のこの審議会委員会以前に、職員の中での情報共有をしっかりしてもらいたいということ、それから会議の公募や委員の公募が当たり前になってほしい、また、事前にその委員に資料や情報をきちんと伝えてほしいアンケートなどはきちんとその結果を町民に戻してほしい。アンケートに書かれているのを読んで、「こんなふうにそれを反映させました」とか、もしくは「こういう理由で今回は反映できませんでした」というようなことを伝えてもらえるかどうかで、実際に反映したかどうかよりも、それをきちんと説明していただけると記入した町民としては、非常に充実感があります。それから政策情報、その政策の執行の途中に、「あら、これはどうなったのかしら?」というようなことを気軽に知ることができる場所や人が欲しいという、そういうようなことが出されました。

 ほかには、私たち住民自身も委員会や審議会にお金をもらって参加しても、勉強不足であったり、意見をまとめる力がなかったりして、なかなか発言できない、それをどうにかしていきたいということ。それから、そういう委員会とか審議会の委員長を務める方の持っていき方で、参加したときの充実感が全く違う、その方の人柄が良すぎてというか、事務局案にスムーズに流れるようにということばかりに気をとられていると、「自分が出した意見がいつの間にかどこにもなくなってしまった。やはり言っても無駄だった」というような経験をしたということが、この例会でも出ていました。

住民参加を保障してほしい施策・事業とは
次に、三つ目の研修の紹介ですけれども、またレジュメの方に戻りまして、住民参加を保障した方がよいと思う事例を考えようということで、その下に書いてあります。
これは、Kという施設を設置するということに絡んでの出来事です。詳しくは述べませんが、K施設設置についての計画が突然大幅に変更になりましたが、どのような決定のプロセスがあったのか、全く不明であるということ、それからその変更になる理由を聞いてもみたのですが、お答えをいただけないということ、それから関係者や住民としても意見を持っており、またそれを先ほど紹介した「元気まち100人会議」などの中で、学習会として研修もして、その結果を行政の関係の方にも配ってもいたのですが、聞いてくれたのか、見てくれたのかもわからなかったというようなこと、そして、今はまだ言えない段階にしても、この先どこに住民参加のプログラムが用意されているのかというような説明もなかったということ、そういう残念な部分が感じられました。
 それを私が発表した後で、例えば高齢者福祉の分野で活動している方などから、同じようなことが出されまして、参加の機会があったりなかったりする、これはその担当者によって、また住民が知るのが後になるとか、持っていく場が不明確であるというようなことが、次々と出されました。それに併せて、信頼できるような、きちんとした提案や提言ができる力をどれぐらいの住民が持っているのかということも、もちろん課題として挙げられています。

条例試案について
 次に、レジュメの3番に移りまして、白老町の「協働のまちづくり推進条例」の試案について説明したいと思います。資料の9ページをごらんください。こちらがこの条例試案の構成になっています。これについて質問がありましたら、後ほどきっと田中さんが答えてくださると思います。10ページから、具体的なまちづくり推進条例ということで案が上がってきました。

 私がこのことについて話し合いを始めた2年前「住民参加条例というのがあるんだよ」と聞いた時には、先ほど田中さんが二つあると言った後の方、市民がいろいろな活動をしていく、その活動を促進するような条例をイメージしていました。行政の方は、行政の仕事の中に住民参加を取り入れるということをイメージしていました。いろいろ話し合っていくうちに、それから行政の方のお仕事の中に、子育て支援という部門がここ2〜3年のうちにどんどん上がってくるという状況の中で、やはりしっかり住民の声もお仕事の中にも取り入れてほしいと私自身も思うようになりました。ですから、その両方を踏まえた内容になってほしいと強く願っていました。この条例試案を札幌の方が中心になって考えてくださって、初めて拝見したときに、私たちがこういうことで不便や不満や悶々とした気持ちを抱いていた部分がすっきりとするような、本当にこれが現実になっていったらどんなにいいだろうと思うような案を作ってくださったと、ありがたく感じました。

 基本的な視点としては、10ページの基本理念の第3条に載っていると思います。3項のところでは情報共有の原則を、それから4項のところでは、特にこれからとても大事だと思いますので、読ませていただきます。「まちづくりにおける計画・決定・執行・評価のすべての過程で、町民の参加や意見の反映がなされるように、町民参加の保障と意見などの反映の仕組みを確立しなければならない」という手続保障の原則、そして三つ目には活動支援、自立促進のことが書かれています。

これからの課題
 (3)「これからの課題」の方に進みますが、私は、特にこの手続保障というところが現実に進んでほしいと強く願います。実際に進むためにはということをイメージしたときに、今までの経験から次のことを思いました。
 一つは、行政の職員の方――特に管理職ではない職員の方にこそ、政策を進めていく上での手続保障というか政策過程の全体像をその職員の方が描けるように、しっかり情報共有をしていただく。そういう行政内の関係であってほしいということです。というのは、1人の職員の方がものすごく有能で、気持ちがあっても、政策の過程というのがその方が知らされていないばかりに、どういうふうにこれから進んでいくかが見えないと、計画の部分で住民参加をしたらいいのか、執行の部分でしていったらいいのかということがわからないわけです。そういう状態では、たとえこの条例ができても、使っていけないのではないかという思いがありました。

 二つ目には、実際に白老町の場合は、幾つかもう協働の事業ということで、効率を上げているものが出てきているわけですから、そういう事例を積み上げて、だれでもわかるような形で残していきたい、その条例制定の過程で、「住民参加ってなかなか苦労も多いけど、やった方がいいんだよ」と思ってくださる職員の方が1人でも増えてほしいと思います。
 そして最後に、「私にできることは」ということで、これからまだ期間をかけて多くの人と合意形成しながら制定していくわけですが、住民の側にもまだまだ力が足りないわけです。全くの微力ですが、私自身多くの住民や職員の方と対話して、自治の意識を高めて信頼関係を築いていきたいと思います。以上で私の発言を終わらせていただきます。

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